要件定義や機能化で顧客の声を聞いてはいけない

システム要件定義,機能化,なぜなぜ分析

困っている人

要件定義などでは、お客様のやりたいことや必要なことなどの思いがあるので、その話を聞かないと進められないのでは?

こんな人にオススメの内容です。

本記事を読むと、要件定義では何をしなければいけないのかを知ることができます。


まずは自己紹介です。

自己紹介

肩書:ITコンサルタント
経歴:ERPベンダー > SIer > 大手製造業(主に営業・コンサル)
   これまで100社以上の顧客とプロジェクトを実施

これまで、ありがたいことに満足度調査では常に4.5点以上(5点満点中)をいただいており、多くのお客様は継続してご契約もいただけています。


これまで多くのプロジェクトを見てきましたが、顧客の声を聞いて要件定義書を作り、その通りに開発もしたのに、顧客側は要求したものと違うと怒っているというものがいくつもあります。

なぜそうなってしまったのでしょうか?

顧客は自身の要求を正確に伝えられない

当たり前の話ですが、顧客はシステムのプロではありません。むしろ素人です。
その素人が自分の要求事項を正確に伝えられるわけがありません。

オレゴン大学の実験でこんな話があります。。

これは、本来の要求事項は右下の「木にタイヤがぶら下がっているもの」ですが、顧客が要求事項として伝えたのは左上の「木に3段ブランコがぶら下がったもの」だったという話です。
ほかにも、「プロジェクトリーダーの理解」「アナリストのデザイン」「プログラマのコード」など、それぞれ認識が違っているという状態を表現しています。

このような状態でプロジェクトがうまくいくはずはありません。

伝言ゲームがゲームとして存在してしまうぐらい、物事を正確に伝えるのは難しいのです。
それに加え、システムを詳しくない人が要求事項を伝えるという事は、正確に伝わらなくて当然です。

まず、プロジェクトリーダーはこういうことが発生するリスクがあるということを認識しておかなければいけません

業務の目的から要求事項や機能を洗い出す

顧客が正確に要件事項や機能を伝えられないのであれば、どうやってまとめればいいのでしょうか?

それは、業務目的を明確にし、その目的を達成するためのものかどうかということです。

システム構築に関する要件定義は、どういう解決法を選択するかによって必要なリソースが変わってくるので、多くのプロジェクトでは解決法を決めたがる傾向にあるように思います。

ですが、要求事項や機能には必ずそれをやるための目的があり、顧客はその目的を達成するためにシステムを導入します。また、それによって得られる価値や効果を期待してお金を払います。
ですので、顧客はその目的が達成されるのであれば、手段は問いませんし、金額に見合った以上の価値や効果があればお金を払います。

なぜなぜ分析

顧客に業務目的を確認して要件定義したから、もう大丈夫と思っていませんか?
その目的は本当に会社の目的ですか?なぜその目的を達成しないといけないのですか?

プロジェクトが始まると、特定のメンバーを中心に進めていくことになります。
物事を進めていくには、ある程度限られたメンバーで決定していくことは重要です。

しかし、コミュニケーションが密になってくると、全て分かったような気になってしまいがちです。そうならないために、いろんな場面でなぜなぜ分析をすることで、本質にたどり着くことができます。

例えば、顧客満足度向上を目的としてプロジェクトが進めていたとします。
おそらく、プロジェクト中盤には顧客満足度向上が浸透しており、この目的に何の疑問も持たなくなるでしょう。では、なんのために顧客の満足度を向上させるのでしょう?

顧客に感謝されるためですか?
継続受注するためですか?
ほかの顧客を紹介してもらうためですか?
それともほかの目的ですか?

では、その目的を達成させるために、顧客満足度向上は最適な手段なのでしょうか?

また、プロジェクトメンバーの目的はそうかもしれませんが、ほかの人や上長なども同じ認識なのでしょうか?
多面的・多角的な視点で見てみると、実は本当の目的ではなかったということもよくあります。

ここまで考えて進めても、なお認識祖語が発生してしまうことはありますが、やらないときと比較すれば、相当発生頻度は下がりますし、そのレベルでの祖語であれば、お互い納得感もあるので揉め事になるようなことは少ない気がします。

まとめ

プロであっても要求事項を正確に伝えるのは難しいことなのに、素人である顧客は、自分が知っている範囲で最善と考えた手段を伝えようとします。それでは、何ができるかよくわかりませんし、できたとしても顧客は満足しません。

そうならないために、業務の目的から要求事項や機能を洗い出し、なぜなぜ分析をすることで課題の本質を見極めることが重要です。